古い図書館の内部を黒い色鉛筆で緻密に描き出すアーティスト、寺崎百合子が、1998年から一年間、英国オックスフォード大学に準客員研究員として滞在していた時の体験を記した一冊。オンデマンド復刻版。
(本書「プロローグ」より)
「オックスフォードにいらっしゃるときはぜひ革靴でいらして下さい。靴底もちゃんと革の、本当の革靴で……」
私は友人への第一報でそう伝えた。オックスフォードを歩いてまず気がついたのが、自分の靴音だったからだ。
カツーン、カツーン、カツカツカツ……と、いい音がする。靴音に促されて、胸を張ってさっそうと歩きたくなる。そういえば、自分の靴音をきいたのは久しぶりだ。日本でも同じ靴をはいていたのに、どうしてこんなに靴音が違って響くのだろう。
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