HESCHUNG

 

 

フランスの靴ブランドとして名高いエシュン。

その工場は、今も北アルザス地方の静かな田舎町にあります。

1934年、創業者ユージーン・エシュンが、頑丈で耐久性の高い「リバースウェルト」製法で山岳労働者用の作業ブーツを作り始めてから、何ら変わらぬ姿でそこに佇んでいます。

 

 

都会的で洗練されたスタイルを誇るエシュンですが、その真の魅力は、しっかりした物づくりに対する哲学と言えるでしょう。

1950年には、作業ブーツに続き、世界で初めて革のスキー靴を手がけています。

防水性にも優れるリバースウェルト製法のノウハウが生かされた競技用のスキー靴は、世界から高い評価を受けました。

 

 

エシュンの工場では、総勢20人ほどの職人が、それぞれの持ち場で仕事に取り組んでいます。

一足の靴が仕上がるまでの工程は、およそ150から180。そのひとつひとつを専門の職人が担当しているのです。

20年から30年以上もこの仕事に従事してきた熟練の技が、随所に光ります。

 

 

靴づくりは、色とりどりの皮革を並べた棚での革選びからスタートします。

エシュンで使われるのはすべて、イタリアやフランスでなめされた天然皮革。

植物に含まれるタンニンを用いた伝統的な手法「タンニンなめし」を施した、アンテロープ(羚羊)や仔牛、山羊の革は、使い込むほど艶が出て、風合いを増していきます。

 

 

全ての製品のデータはきちんと工場内に保管され、歴代モデルのサンプルも綺麗に展示されています。

数多くのモデルに使われる革の靴底には、適度なしなやかさとクッション性があり、通気性や耐熱性に優れていますが、傷んだ時に取り替えるのは厄介なもの。

そのため、エシュンの工場では、専門の修理工も働いています。

手入れを続けることで、靴を長く愛用してほしいという想いが伝わってきます。

 

 

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明るい外の光が差し込む工場内には、たくさんの機械が置かれています。

型に合わせて革を切り抜く機械。革を薄く伸ばす機械。エシュンのロゴを印字する機械。なかにはずいぶん古く、使い込まれたものもあります。

しかし機械とはいえ、全自動というわけではありません。それを使いこなす熟練の手が何より重要なのです。

 

 

一見、たやすく作業をこなしているようですが、どの工程にもスピードと正確さが求められます。

それが、高いクオリティを保つための一番の秘訣でしょう。

 

 

 

エシュンの工場の入口にある大きな木のてっぺんには、直径が一メートルを越える巨大な巣があります。聞けば、コウノトリの巣だとのこと。

湿地帯であるアルザス地方にはカエルやトカゲなどが数多く棲息し、それらを餌にするコウノトリがあちこちで巣作りするため、町のシンボルにもなっています。

日本では「赤ちゃんを運んでくる鳥」として知られますが、ヨーロッパでは、キリスト教で悪の象徴となるカエルやトカゲを食べてくれる、つまり邪悪なものを追い払う「聖なる存在」として敬われてきました。

さらには、つがいで卵を孵し子育てをし、一家で飛び立った後も、翌春には同じ巣に戻ってくることから、コウノトリが住み着く家には幸運が訪れるとも伝えられています。

 

 

エシュンの靴は、こうした場所で日々、大切に生み出されているのです。